2018年は加賀鳶発祥(かがとびはっしょう)300年の記念の年です。
300年前、江戸では火災が多く、八代将軍徳川吉宗が禄高1万石以上の藩に、江戸藩邸を守る「大名火消し」を設置するよう命じました。そこで加賀藩では江戸上屋敷(かみやしき)の防備のためにすでに設置していた自衛消防隊をさらに豪華なものに増強しました。それが加賀鳶の始まりとされています。
加賀鳶の火消しは、勇猛果敢(ゆうもうかかん)な活動と華麗(かれい)な装備で、当時の浮世絵や歌舞伎の題材にされました。大名火消しといえば加賀鳶のことを指すようになったのです。
明治に入り江戸藩邸の加賀鳶38人が金沢に移り住み、「梯子(はしご)のぼりの技」と、「江戸木遣り歌(きやりうた)」を金沢に持ち帰り、それが現在の「加賀鳶はしごのぼり」と「加賀鳶木遣りくずし」の歌となりました。
加賀鳶はしごのぼりの演技を紹介します
加賀鳶はしごのぼりの演技を紹介します。火の見に始まり、八艘飛び、灰吹き、そして、緊張の二本背亀、一本背亀、力技の横大、猿の子返し、そして圧巻は鶯の谷渡り、最後は敬礼をして終了です。加賀鳶梯子登りの演技をしたいという興味をある方はご連絡ください。
①の1 火の見(1)遠見
はしごの頂上から火事の状況、風向き、周囲の状況などを確認します。はしごのぼりの最初の目的です。
①の2 火の見(2)遠見
方角を変えて確認します。
②邯鄲夢の枕(かんたんゆめのまくら)
邯鄲(かんたん)は中国河北省の商業都市。出世を夢見て邯鄲に来た青年が道端で栄華が思いのままになるという枕を借り、その思いにふけっている姿勢です。
③の1 二本大の字
高いところでバランス、平衡感覚をとる技です。2点で体全体のバランスをとります。
③の2 一本大の字
1点で体全体のバランスをとる技です。
④肝(きも)返り
大の字からの連続技で、腰と足により落下を防ぎます。大の字からくるりと体を回転させて落下しますので、肝を冷やす技です。
⑤腕どめ(首抜き)
肝返りから続く連続技で、腕の力だけで身体を引き上げる力技です。
⑥しゃちほこ(鯱)
鯱は水を噴き上げる海の獣。防火の効き目があるといわれ、建物を守るシンボルとして用いられ、よくお城の屋根棟の両端に取り付けられています。常に尾を反らせている姿勢をとります。
⑦さかさ大
右肩を右竹に、左竹は股の間に入れて、両手両足を開くバランス技です。
⑧-1足留め(表)
足の甲を竹に絡ませ、上体を反らせます。足を交差し、その力で全身を支えます。足の甲、足首の力、腹筋、背筋力を求められる技です。
⑧-2足首留め
⑨八艘飛び
源義経の八艘飛び。遠くへ飛び越える姿勢です。
⑩灰吹き
灰吹きとはタバコ盆に付属する竹筒のこと。垂直な姿勢が求められる大技です。
⑪-1二本背亀
二本の竹の先端2個所で身体を支えます。研ぎ澄まされたバランス感覚が必要で、最も難しい技と言われています。
⑪-2一本背亀
身体を回転させて、竹一本で支えます。緊迫の演技の瞬間です。この技では演技合わせをすることはできません。それぞれの演技者の独自のタイミングが優先されます。
⑫肝返り
一本背亀から一気に落ちる連続技です。度胸満点の技です。
⑬吹き流し
道路や空港の吹き流しを模して、背から足先まで水平に伸ばし、竿の先で風に吹きなびくように見せる技です。
⑭-1つま留め(表)
足のつま先をひっかけるだけで全身逆さにぶら下がります。足先に全神経と力が集中します。
⑭-2 つま留め(裏)
⑮足留め(玉つぶし)
⑯腕留め
⑰-1片膝留め
⑰-2 片膝留め
⑱肝返り
⑲横大
最も力を必要とする大技。腕力、背筋、腹筋の力が求められまする体操の吊り輪をイメージさせる演技です。
⑳猿の子返し
力技が続きます。右手をさらし環にに入れて、横大と同じような演技です。その後、左手を外して、右手一本でぶら下がります。
21 鶯の谷渡り
鶯が谷を飛んでいる姿です。枝から枝へ飛んでいるような曲芸的な技です。はしごのぼりのクライマックスです。演技者の動作が最も激しく動く技です。
22 敬礼
最後の技です。敬礼をして、加賀鳶は終了します。
消防訓練所にて撮影
演技者 新竪分団 澤田大輔君
加賀鳶はしごのぼりの由来
はしごのぼりは江戸時代、火消しが火災現場で高い梯子を立て、火事の状況や風向き、建物の状況を確かめたことが始まりで、さらには高所での作業を行うための訓練や度胸勇気をつけるためにも行われたといわれています。
火消したちは、威勢と気魄を信条に、身軽なしぐさと熟練した技をもって、住民たちの前にその演技を披露するとともに、消防の重要さを訴える役割も担っていました。
このはしごのぼりを最初に行ったのが、加賀鳶でいわゆる日本のはしごのぼりの元祖です。現在、金沢市消防団は、加賀鳶の歴史と気概を後世に受け継ぐため、はしごのぼり保存会を設立し、消防団員全員が保存会会員として、伝統文化の保存と後継者の育成に努めています。
はしご
高さ約6mのはしごのぼり演技専用のものでする真竹製のはしごを使用します。13段ある手の最上段である一番手は他のてよりも外側に長く出ており、演技者はこのぶぶんに手足をかけて、様々な迫力ある演技を披露します。
このはしごの製作は金沢市消防団員が行っております。
纏(まとい)
纏は戦国時代、侍大将の馬印として使われていたものですが、江戸時代には火消しのシンボルとして使われていました。金沢市消防団では49分団ともに梅鉢の紋を頭として分団名を記入しています。いずれも金箔を施した金沢らしい豪華な纏で、かなり重いものです。明治時代の後期から昭和にかけて、現在の形状に統一されて来たようです。